魚野真美 詩舎 夜の目撃者

詩と、その周辺について。

初冬、ある小さき者へ捧ぐ。

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※ ※
ある小さき者へ捧ぐ。
川に身を投じ
流れついた先で、生き残った者たちへ。
川底で岩肌にしがみつき
流れゆく仲間を嘲笑った者たちへ。

※ ※
最近は蟻さえもみなくなった。
それは冬になった、という理由ではない。
もう、この表層へ出る必要がなくなったからだ。
蟻たちのほぼ半数はすでにこの星を脱出したのである。

※ ※
空では呑気に天使が廻る。
ターザンみたく電線から電線へ
ぴょんぴょん跳ねては下手なラッパを吹いている。
その姿は一升瓶を抱え呑んでいるようなシルエットで
足取りもおぼつかない。
リアルに見る天使はこんなもんかとがっかりする
それに羽根で飛んでいるというより
身体がぷにぷにとしているためか
空という水面に浮いているようにみえる

※ ※
この街の
川の流れは早く
吐く息だけが白くて
影だけが黒い