魚野真美 詩舎 夜の目撃者

詩と、その周辺について。

はずむ言葉とふたり。ースピッツ『歌ウサギ』ー

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詩は詩でも歌詞のはなし。


スピッツ『歌ウサギ』がよい。

広瀬すず主演の映画の主題歌。なのでそれに合わせて(表向きは)ラブストーリー系にまとめている。
スピッツは2000年代以降映画『ハチミツとクローバー』や『櫻の園』など少女漫画系の主題歌抜擢が目立つ。しっかり主題歌となれるような仕事を果たしている。

曲調や歌詞など姿形を万人受けに変化させる。それらは書いたように、表向きの見せ方であり、根底に流れているスピッツの形は変えない。『変わらない』ために『変わり続けて』きたから、結成30年を迎えることが出来たのだろう。



スピッツは励ましの曲や、何かを探し求める曲は書かない。
ただひたすら「君と僕」の物語を書き続ける。いつも具体的な形を求めるし、空想のような世界観をつくりながらも「あなたがすき」ではなく「あなたの耳たぶがすき」「足指がすき」と書く。「僕」がしっかりと五感で感じ得る「君」を描く。

また、曲調は変調や激しめのロックなどを好む人にとっては単調に聴こえるメロディがスピッツの曲には多い。わかりやすく、地味である。
しかし退屈な日々での僅かな変化がやけに目立ったり面白がるように、スピッツの単調と思える繰り返しの曲調に独特の「異変」や「快感」を見つけられることができれば、スピッツの世界に一歩入り込んだといえる。
私はスピッツするめバントグループだとおもっている。噛めば噛むほど染み出してくる。知らぬ間にずっとしがんでいて、やめる事が難しい。

スピッツの主題となる「君と僕」。とても小さな世界と言えるかもしれない。そしてあまりにも甘すぎるように感じられる。けれどそれがこの世界を映す主人公、僕や君にとっての全てであるように思う。


それは詩でもおんなじと思ってて。
大きくて小さな世界を泳いで遊んで流れて。
決して悲観的にならない。ウサギみたいにはずむ詩を。



スピッツ『歌ウサギ』
http://j-lyric.net/artist/a000603/l041366.html